デジタル化の幕開けを前に
およそ10年の歳月をかけ、1997年、ピープルメータによる機械式「個人視聴率調査」がスタートした。この間のピープルメータ「導入」についての論議から、われわれは多くの教訓を得た。今度はデジタル化である。
2008年9月、翌年の地デジ完全移行の半年前、米ニールセン社はいち早く完全移行を成し遂げたノースカロライナ州ウィルミントンで、デジタル対応測定機(A/Pメータ)を世帯に取り付け、本番さながらの最終実験を行った。他方、わが国では、2008年12月になっても、“視聴率調査はこうなる”との指針が示されることはなかった。2011年の完全デジタル化移行までに多少の時間はあるとしても、またしてもこの対応の緩慢さに業界は苛立っていた。
着実だった米ニールセン社の対応
「デジタル化」の時代では、多チャンネル化し、多メディア化するため、メディア環境は大きく変貌する。視聴者の「選択肢」は多様なものとなり、畢竟、番組視聴率は小さくフラグメント化する。
こうした状況下、米国では調査専門家委員会(The Council for Research
Excellence)からニールセン社に対し“デジタル化時代に相応しい視聴率調査の構築を求める”旨の勧告がなされ、同社は直ちに現行視聴率調査改善へ取り組みを始めた。なかでも画期的な計画はA2/M2という取り組みである。
A2/M2とはAnytime(いつでも)、Anywhere(どこでも)、Media(どんなメディアでも)、Measurement(測定できる)という調査システムの発表であった。デジタル化時代の足音が聞こえ始めた2006年。いち早くニールセンは、その対応を開始したのであった。
録画の再生視聴やモバイル対応に着手
デジタル化されると帯域はこれまでのものとは大きく異なるため、測定機自体の改善が不可欠となるのはいうまでもない。否、それ以上に大きく異なるのは、視聴機器の変化がもたらす視聴者の「視聴態様」の変容である。
人々は番組をライブ視聴するのではなく、“見たい番組は、見たいときに見る”という視聴習慣が生まれたのである。またテレビ受像機以外の機器による番組視聴という現象も常態化した。
そのためニールセンは「ライブ・プラス視聴率」の算出を余儀なくされ、1週間以内の録画の再生視聴率を実放送の視聴率に加算する「プラス・セブンデイズ」視聴率の算出に着手した。
またインターネットによる番組の視聴やストリーミング・ビデオの測定などの実験調査にも着手。Solo MeterやGo Meterなど、さまざまな環境下に対応できる測定機の開発に腐心したのである。なかでも関係者の目を見開かせたのは、音声信号の識別により、自宅以外の場所での視聴を測定する可搬式視聴測定機(IMMI Phone Meter)の開発であった。
(つづく)
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