テレビウォッチャー

2015年9月9日水曜日

第27回 デジタル化時代の視聴率調査(その3)

デジタル化と測定機
 申すまでもなく「デジタル化」は、これまでの「アナログ」とは大幅な帯域の違いから、従来の測定機では、その視聴を測定することが出来なくなり、調査会社は測定機の改善を余儀なくされた。
 ビデオリサーチ社の測定機を例にいうなら、テレビ局から漏洩する発信信号を受信してチャンネルの変化をとらえ視聴率として記録するこれまでの測定方式を、音声比較を核にしながらも、地上デジタル・アナログ、BSデジタル・アナログなど、異なるメディアごとのチャンネルを測定する方式へのシフトを余儀なくされたのである。

デジタル化と視聴者
  デジタル化によって、視聴者は多メディア、多チャンネルの映像文化を享受することが可能になったのである。
 そのため、これまでアナログ7局+BS3局に県域U6局を加えた計16局の放送しか見ることが出来なかった視聴者は、少なくとも4050チャンネルから送り出される番組を視聴することが出来るようになったのである。
 加えてモバイル受信装置による「ワンセグ」や「タブレット」、あるいは「パソコン」による視聴、さらには「録画・再生機器」によるタイムシフト視聴。その他、屋外での大型スクリーンに映しだされた映像を見て楽しむパブリック・ビューイングなど映像を楽しむ機会は各段に増大していったのである。その結果、テレビ番組の視聴は、多くの選択肢に食われて、ますます「フラグメント」してきているのである。
 ちなみに、往時のゴールデン・タイムには視聴率が20%を越える番組がキラ星のごとく並んでいたが、今日、20%超の番組は数えるほどしかなく、特に録画の再生視聴が可能な「ドラマ」番組の視聴率は、タイムシフト視聴の影響をおもろに受け、見る影もない有様である。

あるべき測定方法
  では「ドラマ」は、もっと言えば、テレビは見られなくなってしまったのだろうか?
確かに今のわれわれの生活行動は、往時とは異なり、屋外行動が増加したために在宅時間、なかんずくテレビの視聴可能時間は大幅に減少している。そのため「自宅」の、「据置型テレビ」による「実放送時間に放送される番組」の視聴は、在宅時間の減少、他メディア機器による視聴の影響を受けてライブ放送の自宅内視聴は、大幅に低下しているのである。
 しからば「テレビ番組の視聴」それ自体も大幅に少なくなっているといえるだろうか?
 テレビは「ライブ」では、「自宅の中」では、見られなくなっただろう。しかし人々は自分の見たいときに、自分の見たい機器を用いて視聴しているのである。そうみるなら、つまり「視聴率」が減少しているからといって、テレビ自体が見られなくなったと決めつけていいのだろうか? 「自宅内の」、「据置型テレビによる」、「ライブ視聴」を見たとして計算するという今日のテレビ視聴の「測定方式」が、人々の「テレビの楽しみ方に合致しなくなった」だけのことであって、それを持ってテレビは見られなくなったと決めつけるのは、いささか早計に過ぎないのではないだろうか?

 “ならば、どうすればいいのか?”である。少々キツイ言い方をするなら、今の視聴率調査のあり方は、60年前、テレビが放送を始めた当時のテレビの見られ方をそのまま踏襲してきているに過ぎないのである。テレビはこの60年の間に、長足の進歩を遂げているのである。視聴率調査も、テレビ視聴のあり方に合わせた「改善・改良」を行うべきではないだろうか?
(つづく)